9月も早くもど真ん中!「今日の1曲」
今日はこの曲!
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発売:1969(昭和44)年7月15日 (萩原健一:当時19歳)
売上:4.8万枚(オリコン最高31位)
1969(昭和44)年7月発売のザ・テンプターズ7枚目のシングル曲です。
1960年代の曲の御紹介は今回が初めてです!
とは「誘惑者たち」といったところでしょうか。
ショーケンこと萩原健一氏をボーカルに据え、1960年代末期に巻き起こった「グループサウンズ」ブームを牽引したグループです。
堺正章、井上順、かまやつひろしといったタレント揃いの「ザ・スパイダース」とは兄弟的関係にあり、沢田研二、岸部おさみ(現:岸部一徳)といった人気バンドの「ザ・タイガース」とはライバル的関係とよく位置づけられています。
特に1967(昭和42)年~1968(昭和43)年にかけて、数え上げたらキリがないほどのグループサウンズと呼ばれるバンドが現れては、あっさり消え行くようなそんな状況で、空前の大ブームとなりましたが、そのブームも本当に短いものでした。
そんな中で、1970年代初頭までもちこたえた、息の長い部類のバンドで、またいくつもあったバンド群の中で、ほんの一握りの「売れた」バンドでした。多くのバンドがシングル1曲だけ、せいぜい2曲で終わってしまうところを、このバンドは12枚のシングルをリリースし、特に1968年「エメラルドの伝説」のヒットで世を席捲しました。
●GSブーム終焉期の曲
この曲のリリースされた1969年には空前の規模で湧いたGS(グループサウンズ)ブームもすっかり過ぎ去ってしまい、この年まで残っているバンドも一部の人気グループだけで、ほんのわずかなものでした。
その残ったバンドもブーム期のような往年のヒットが出せなくなっていて、この曲はオリコン最高31位、4.8万枚の売上と、GS勢としては大健闘でしたが、世の中を席捲するには遠く及ばない状況でした。
●サウンド
そしてこのようなGS末期の楽曲は往々にして、当時とは真逆なくらい、落ち着いたものやバラード路線になりがちですが、そんな状況を全然感じさせないポップなサウンドで始まるのですが…
やはりどこかGS末期的な寂しさやメランコリックな雰囲気がそこかしこに漂う感がありました。でも明らかにGS全盛期の曲と比べて音が進化し、洗練された感もまた確かにありました。
転調が多いというのか、ポップなところ、ストリングスだけみたいな穏やかなところなど、とにかくサウンド的な起伏が激しい曲、という事を感じます。
●犬を友になぞらえて
タイトルの「ケーン」は個人的には萩原健一氏の「健」かと思っていましたが、萩原氏がかわいがっていた犬の名前だそうで、緑の野原を駆けずり回りながら、「心を分かち合った友」として触れ合っていた、そんなケーンがいなくなってしまった、俺の心に風が吹きすさび、今日も夕焼けが真っ赤に頬を染めていく…そんな「ケーン」のいなくなった日々を積み重ねるこの曲の主人公(萩原氏)の心情を綴った曲、というところでしょうか。
脱GS期ということは、ブーム期のような作風にも縛られず、ある程度自由な感じで、いかにもGS曲的な曲から外れた曲が多くなる訳で、当時はニューロックといわれるジャンルも出てきつつあった頃で、ある意味無国籍風のサウンドがブームとは別にカッコ良かったと思いますし、そんなサウンドと裏腹に悲し気なケーンとの別れが描かれた佳作といえます。
ケーンとの別れはGS全盛時代との決別、というのは深読みでしょうか。
●作家陣・その経緯
作詞はなかにし礼氏、なんとなく演歌中心のイメージでしたが、こんな曲も書いていたんですね。作曲はかまやつひろし氏、歌い方がどこか萩原氏に似てる感じがします。
かまやつ氏が曲を提供したのは、彼の属するザ・スパイダースの曲をテンプターズの「ブレイン」ともいえる松崎由治氏がつくった事に対する「返礼」だといいます。この兄弟関係にあるグループに、そのような「交流」もあったのですね。
個人の意見ですが、音楽シーンは1968年までのGS期と1972年からの本格的なロック草創期とに分かれ、この曲の出た1969年など70年前後はロックの未確立な「空白の」時代だと思います。そんな中にフッと現れた、風のような1曲だと思います。
そしてまたこの記事を書いていて、関係者に故人が増えた事もつくづく感じました。