今日の1曲

古い曲に偏りますが1曲チョイスして綴ります。

(337) 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ/ダウン・タウン・ブギウギ・バンド(1975)

5月連休が終わったと思ったら、もはや5月すら終わってしまう「今日の1曲」。

 

今日はこの曲!

 

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作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童

発売:1975(昭和52)年4月20日 (宇崎竜童、当時29歳)

売上:78.8万枚(オリコン最高1位) ※1975年度 年間5位

 

1975(昭和50)年4月に発売されたダウン・タウン・ブギウギ・バンド4枚目のシングル曲で、当初は「カッコマン・ブギ」のB面曲でした。

 

●アンタ、あの娘のなんなのさ?

のフレーズがあまりにも有名な本作は、発売から遂に50年経ってしまいました。

我々の子ども時代の昭和50年代、誰もが知るこのフレーズ、でもどこの誰が発信していたのか当時は全く知りませんでした。

宇崎竜童という名前を知ったのは昭和56年の暮れで、ちょうどダウン・タウン・ブギウギ・バンドが解散した頃になりますが、当時自分が小学時代購読していた某学習雑誌にて、来年(1982)年に小6になる読者が年男(戌年)になるのと同じく「来年年男になる芸能人」の一人として載っていました。

その芸能人には、石原裕次郎愛川欽也坂上二郎西川きよし中原理恵…といった当時小学生なら誰もが知る名前が並んでいた中で「宇崎竜童」だけ分からず、親に訊いたら「作曲家やん」みたいな返事でした(笑)

彼の名を知ったのがその1981年なら、本作をリリースしたダウン・タウン・ブギウギ・バンドの存在を知るのは更に後で、1990年代初め頃だったと思います。

自分がこういう曲があると知ったのは1987(昭和62)年頃で、曲を初めてちゃんと聴いたのは、1991(平成3)年の事でした。

 

ちなみにこのフレーズは他番組にも利用され、宇崎さんがオープニングナレーターを担当したドラマ、必殺シリーズ必殺仕業人(1976年)では毎回のサブタイトルが「あんた この○○をどう思う?」というものでした。

 

阿木・宇崎夫妻コンビのデビュー作

ダウン・タウン・ブギウギ・バンドとしては4作目のシングル曲で、既に「スモーキン’・ブギ」がヒットした状態でしたが、その3ヶ月後にリリースされました。

それまでの楽曲は阿木さんのものではなく、本作が阿木燿子さんの作詞による初めての楽曲となり、作曲は夫であり本作の歌い手でもある宇崎さんが担当し、その後山口百恵さんの路線を定着させた横須賀ストーリーなど多数の楽曲が、この夫妻の手による作詞作曲で、世に送り出されていきました。

 

↓スモーキン'ブギについてはコチラ

lefthand926.hatenablog.com

 

その阿木さんの作詞デビューとなった本作は、ヨーコという女を探すため方々を訪ね歩き「1年前だと…」から「半年前に…」へ、そして「三月前まで」と、だんだん彼女の行動の最近まで分かっていくストーリーになっています。

その迫っていく合間に

♪アンタ あの娘のなんなのさ?

が何度も差し挟まれています。

そんな本作は、阿木さんの作詞デビューにしてオリコン1位を獲得、勿論ダウン・タウン・ブギウギ・バンドにとっては唯一の1位獲得曲となり、78.8万枚を売上げ1975年度の年間売上5位にランクインする大ヒット曲となりました。

 

●刑事ドラマへの反映

このストーリーをドラマに反映させた事があり、当時のドラマで坂上二郎さん主演の人情刑事ドラマ「夜明けの刑事」で、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの全員がゲスト出演した回「港のヨーコは殺されていた?」(1975年)で、刑事たちの聞き込み時に本作が流れ「いついつまでいたよ」のような証言が取れ、ドラマ初出演と思われる宇崎さんが「アンタ あの娘のなんなのさ」のフレーズを発しています。この回ではヨーコは行方不明になり殺されていましたが、演じたのは桃井かおりさんでした。

後に「あぶない刑事」「温情」(1987年)でも、記憶喪失になったヨーコという少女にユージが記憶を取り戻させようとするエピソードがあります。

とにかく、多方面に多大な影響を与えた作品、という事ですね。

 

●全編「喋り」の衝撃作

本作の最大の特徴は、前編が「喋り口調」である事です。

メロディーに乗せて歌っているのは、タイトルでもある

♪港のヨーコ ヨコハマ ヨコスカァ~

の部分のみです。

演奏は殆どがギターによるリフで、そのメロディーに乗せて、刑事の聞き込みに証言する店員のような口調で延々と喋り続けるというものです。

こんな曲はそれまでのダウン・タウン・ブギウギ・バンドにはなく、世のシングル盤にも、少なくともヒット曲にはなかったと思いますが、それだけ当時リアタイで聴いた方々には斬新で衝撃だったと思います。

このエピソードとして、宇崎さんが阿木さんから詞をもらった時に「俺の歌う曲だ!」と思ったものの、メロディーがどうしても浮かばず、アメリカのトーキングブルースを聴いていて「すべての曲を語りにする」という発想になったといいます。元々語りにしたわけでなく、メロディーが出てこなかったから、なんですね。

ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのその後の楽曲では、本作同様サビだけ歌っている「商品には手を出すな」や全編相手に話しかける一人芝居調の「スプリングセールス・ブルース」など、この手の奇抜な楽曲が存在します。

 

●当初はB面

そんな本作は元々「カッコマン・ブギ」のB面曲でした。

カッコマンも後世に影響を及ぼした軽い感じのロックで、前作「スモーキン’・ブギ」のヒットの余勢をかってか、ブギ調で推したものと思われますが、B面であったこの奇抜な楽曲が有線チャートで急上昇し、大ヒットに繋がったといいます。

長渕剛さんのブレイク曲「順子」なども当初はB面だったといい、こういうケースはたまにあるのですね。

 

●アルバムバージョン

シングル盤しか聴いた事がないという方が大多数と思いますが、アルバム「脱・どん底の最後の曲として本作の別バージョンが収録されています。

シングル盤のイメージでこのアルバムバージョンを聴くと違和感がかなりありますが、シングル盤の重厚な雰囲気とはまるで違っていて、ポップなメロディーに、セリフも早口な印象があり、全体的に「軽い」感じがします。

リリース時期だとこちらのアルバムの方が少し先で、後にシングルカットの形でB面に誰もが知るバージョンがリリースされた格好です。