今日の1曲

古い曲に偏りますが1曲チョイスして綴ります。

今日の1曲 (7)接近(アプローチ)/南野陽子 (1986)

今日の1曲、また少し開きましたが7回目です。

 

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作詞:森田記/作曲:亀井登志夫

発売:1986年10月1日

売上:13.1万枚(オリコン最高6位)

 

1986(昭和61)年10月発売の南野陽子さん5枚目のシングル曲です。

本来は2枚目のシングルとして発売予定であったものが、発売延期となり内容も少し変更され、約1年後にリリースされる事となったというそんな背景があったんですね知りませんでした。ちなみに作詞の「森田記」というのは昭和のヒットメーカー・康珍化氏のペンネームです。

 

オリコン最高6位で、前作「風のマドリガル」の最高5位に及ばず、デビュー以来右肩上がりだった最高位は初めて前作を下回る事になり、売上は前作をやや上回り、2作前の「悲しみモニュメント」(「スケバン刑事Ⅱ」の後半主題歌)に次ぐものでした。しかし次の「楽園のDoor」から実に8作連続1位の快挙を成し遂げ、この作品はそのブレイク前夜的な時期に発売されたものです。

 

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全体的に淡々としたメロディーに、淡々とした歌い口で、彼女らしい、その「らしさ」が活かされた楽曲になっていることを感じます。

 

女の子が好きな男の子をカフェへ呼び出しみたら、その彼のセーターは他の女の子が編んだもので、彼に恋愛相談したかったと言ったけど、それは口実で本当は彼に逢いたかったのだという彼女の心情を綴るのですが、そこに南野陽子さんのどこかもの寂しげな歌唱が被さって、女の子の切なさが滲み溢れている、そんな感じがしましたし、何回聴いてもその切なさのような気持が心に染み入ってくる感じがします。

 

独特の淡々としたメロディーを聴くと「あぁ、この時代はもう来ないんだな」と思わされます。いつの時代でもあるサウンドと、そうでないものとあると思うんですが、この曲の音は紛れもなく後者だと思います。「この時代はもう来ない」とも思うし、あの頃少年少女だった自分や周りの人たちには、もうあの頃の若い輝きは戻らないんだ、という事をつくづく思い知らされるはるか遠い昔にしかないようなメロディーだな、と感じさせられます。なんとも活字で表現しにくいんですが…。

 

絞るようにちょっと舌足らずで言う、サビの「♪好きよ あなた」という歌唱にもハッとさせられます。なんだろう、普段自分の心の中だけに相手への想いをしまっている女の子が勇気を出して絞り出すように囁く、そんな告白…。やはり活字にすると平板な感じになってしまいますが、そんなような感情を連想して、ハッとしてしまうのです。

 

♪耳元でほらアプローチ、っていうのも良いですよね、特に「ほら」という言葉の囁き具合がなんとも絶妙なんです。地声で告白するんじゃなくて、耳元で囁く感じの告白、聞こえるかどうかわからないぐらいの可憐な感じの声で。聞こえなかったら「え?何?もっかい言って」みたいな。今だったら「(年いって)聞こえないから、もっかい」みたくなるかもですが(笑)

 

百聞は一見に如かず、とにかく聴いてみてください、南野陽子さんの「接近(アプローチ)」