今日の1曲

古い曲に偏りますが1曲チョイスして綴ります。

今日の1曲 (157)ガストロンジャー/エレファントカシマシ(1999)

新年2日目、「今日の1曲」。

今日はこの曲!

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作詞/作曲:宮本浩次

発売:1999(平成11)年12月8日 (宮本浩次:当時33歳)

売上:2.4万枚(オリコン最高29位)

1999(平成11)年に発売されたエレファントカシマシ22枚目のシングル曲です。

 

●歌う部分はほとんどなし

かつて宇崎竜童氏が率いたダウン・タウン・ブギウギバンド「港のヨーコ・ヨコハマヨコスカ」(1975年)のような、「歌っている部分がほとんどない」曲で、延々と宮本浩次氏が日本の現状を憂い、自分の気持ちを並べ立てて、激しく問いかけているという曲です。

「港のヨーコ~」でもサビでは一応歌っていますが、この曲ではサビの一部で♪Oh…とコーラスしたり、♪胸を張ってー、とかほんの一部のフレーズに歌らしいメロディーがのっているぐらいで、後は「喋り言葉」です。

なので、歌詞を見て頂ければわかるように、歌詞がめちゃくちゃ長いです。

ちなみにタイトルである「ガストロンジャー」の言葉に特に意味はなく、宮本氏が「ガxxxx」から浮かんだという完全なる造語だそうです。

 

●日本の現状

まずは日本の現状についてどう思うか?を問うところから始まります。

これに対して自身は、憂うべき状況とは思わないけれど、素晴らしいかと聞かれたら「まあまあ」だと言わざるを得ない、これがたいへん不本意だ、と続けています。

なので、特段反戦だとか反体制だとか、政治に対して物申している曲ではないんだな、というのが最初聴いた感じでした。

 

●原点回帰

真相は定かではありませんが、ある書き込みによると「日本の現状」と「自身のバンドの現状」がオーバーラップして、ある種の不本意に思う部分があり、サウンド的にもこの頃ぐらいから「原点回帰」した感がありました。

個人的にこの1、2年くらい前からエレファントカシマシにハマり始め、「今宵の月のように」がヒットした後ぐらいだったかと思いますが、この曲にハマったのではなく、それ以前の骨太で粗削りだった頃のエレカシに魂が突き動かされました。

特に最初のアルバムエレファントカシマシ(1988年)ではこれが顕著で、「こんなすごいサウンドとボーカルのバンドがなぜ売れてなかったのか?」とよく思ったものでしたが、段々とそのボーカルは残りつつ、詞やサウンドがもどかしいものになっていき、「ノリにくい」「重苦しい」ロックになっていった感がありました。そこから脱却し始めたのが1993(平成5)年のアルバム「奴隷天国」、完全に「抜けた」と思えたのが1994(平成6)年のアルバム「東京の空」でしたが、これらは殆ど売れず、遂にはレコード会社から契約解除されたといいます。

2年後の1996(平成8)年リリースのアルバム「ココロを花を」ではたいへん洗練されたマイルド感があり、個人的には当時ブレイクした「スピッツ」のような楽曲と思っていましたが、そういう感じの楽曲が世の支持を得たのか「今宵の月のように」のヒットに結びついたのかな、という感じでした。

世間的にはこれで成功したようなものでしたが、初期のサウンドを知る者としては「世に媚びて少し甘い路線にした」感(あくまで、個人の感想です)があって、この勢いの中で初期の荒々しいロックの作品をリリースしてほしい、と思ってきました。

そんな折に出てきたのが「真夜中のヒーロー」で、スローながらも重厚なサウンドで骨太が感じられ、とどめはこの曲でした。歌は殆どないながらも、ノリ的には「こういう感じの曲を待っていた!」となりました。骨太ロックへの原点回帰、この雰囲気が翌2000(平成12)年のアルバム「good morning」でより明確になり、ある種のここが到達点だったように思いました。

 

●過去からの経過

日本の現状に対しての問いかけから、次は自身が生まれてこれまでの世の流れに触れています。

宮本氏が生まれたのは1966(昭和41)年、確かに高度経済成長の真っ只中で、今みたいな先の見えない時代というより、世の中が「右肩上がりの成長期」だった頃でした。といっても自分では体感していないので分かりませんが、少なくとも右肩上がりの世の中は経験してるので、そのモーレツな部分や浮かれ具合などはある程度は想像がつきます。

アメリカに戦争で負けたコンプレックスを振り払うため人々は猛然と働き、政府はアメリカに追いつけ追い越せで時が流れていった、そんな感じでしょうか。「復興」「繁栄」こんなワードが戦後日本を象徴するといいます。

 

●しらけた世代

この言葉はおそらく、戦争の影響の薄れてきた昭和30年代生まれ以降の事を指すのか、ここは想像ですが、戦争からの復興で、そして高度経済成長期を猛烈に働きぬいた親から生まれた子供たちの世代(宮本氏もこれに含まれる)の事だと思います。

その繁栄の結果、豊かさは受け継いだけれど同時に「どっちらけ」も受け継いだと綴られています。

そして♪「くだらねえ世の中」「くだらねえ俺達」(←ここも若干メロディーがついてました!)と、自身に対する不満、世の中に対する不満「今の時代は…」につづくネガティブな言葉や、「昔はよかった。今の若い奴ときたら…」というそんな言葉は、「100年前でもおんなじ事言ってたよ」「縄文時代から変わってない」と言い切ります。今の時代や若者に対する不満なんて、昔からずって言い続けられてきた事なんだよ、と。そういいつつも「ダメなものは破壊される」という「淘汰」の事も添えられていました。

 

●何かをしてくれる期待感

何度も♪化けの皮を剥がしに行こう と歌われていますが、♪俺は折角のロックンロールバンドだ という言葉に「何かやってくれそうな」期待感がありましたねこの頃のエレカシには。歌や音楽を通して世に訴えかけようぜ、そんな感じでした。政治には興味はありませんが、何かメッセージを政府にでも??叩きつけてくれるんじゃないか、というような。こういう業界も所詮は「商業」なので、ある一定以上の事は出来ないと思いますが、それでも音楽の持つ力強さで「何かが変わるんじゃないか?」そんな事は、この曲を聴いてて思った事があります。

しかし、俺は折角のロックンロールバンドだ、という表現が彼らしく、またこのバンドらしい表現だと思いました。「俺は」ではなく、あくまでも「俺」は、なんだなと。

 

●不動のワンマンバンド

これは楽曲から離れてこのバンドの話になりますが、いつも不思議に思いますが、このバンドほど世に出てボーカルだけが前面に出ているバンドも珍しいと感じます。

大抵のバンドは誰か他のメンバーも何人か人気があったり、少しくらいは有名であったり、メイン以外の誰かがボーカルを取ったりすることあると思いますが、ここには全くそれがないのです。

「甲斐」バンドですら、他のメンバーがボーカルを取った曲でシングルヒットを放っているし、ハウンドドッグも他のメンバーが作詞作曲などで大いに才を振るっているのに、このバンドは一口にいうと究極の「ワンマン」バンドと感じます。

そんなバンドでありながら昭和期から一度もメンバーチェンジがなく、不動の4人で続いてきているのが、ものすごく不思議です。

普通なら誰かが音楽性の不満や目立たない事の不満などでいつ辞めるといってもおかしくないのに、宮本氏と他の3人のバランスが完璧すぎるのか、こんなに偏っても続いているのが「奇跡」です。

それだけ他のメンバーが宮本氏の音楽性を信頼し、フロントマンの役割も完全に身を委ねている(事に何の不満もない)のでしょうか?しかもこのバンドを立ち上げたのは宮本氏ではなく、他のメンバー2人だというのも実に驚きでした。

 

また、全員が無事でここまできた訳ではなく、ドラムス冨永氏が急性硬膜下血腫に罹ったりなどの苦難がありつつも続けられているのがまた素晴らしいバンドと思います。

 

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